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まめちしき
【公的な介護保険サービスと介護保険外サービスの考え方】
言葉で見ると介護保険『内』か介護保険『外』かの違いだけに見えますが、考え方は根本的に異なります。
まず、介護保険内は共助と呼ばれるサービスです。基本的な目的は『自立支援』を行う事です。従来の生活が続けられるように支援する仕組みであり、できなくなった部分を支援する、いわゆる「マイナス状態をゼロに戻す」サービスです。「それ以上」はできないサービスとなります。
次に、介護保険外は自助と呼ばれるサービスです。喜びや楽しみを求めたり、自分の生活をより充実させるもの、豊かにするもの、生きがいのために利用するものなど、自分のニーズに合わせた付加価値の高いサービスを自由な意思決定により選択することができるサービスです。『よりよい生活をする』すなわち「ゼロからプラス」生きがいや楽しみを持って、生き生きと地域で暮らせるように支援することが目的のサービスとなります。
保険外サービスについてはまだまだ浸透されていないので、サービス目的を知らない方や特にケアを担う従事者からの視点では、支援をやりすぎてしまうのはよくないという考え方をしてしまう方も多くいますが、もちろん、自立支援を中心に考えるというプラン設定も可能であるため、ご利用者様の利用目的に合わせて考えることが大切です。
【公的な介護保険サービスと介護保険外サービスのメリット・デメリット】
〈公的な介護保険サービス〉
〇メリット
利用料金が税金から一部(1割~2割が自己負担分)支給される。また、全国どこでも同一の訪問看護・介護が受けられる。
〇デメリット
費用の自己負担が軽い反面、要支援・要介護度によって居宅に滞在できる時間や利用できる回数等に制限があるため、決められた限度を超えてサービスを受けることはできない。サービス内容に制限がある。土日等の対応ができない事業所が多い。
〈介護保険外サービス〉
〇メリット
利用回数・時間・内容に制限がない。夜間対応・長時間の看護・介護の対応、土日等対応も可能な事業所がある。
〇デメリット
すべて自費のため、公的な介護保険サービスよりも費用がかかる。介護保険外サービスを提供する事業所自体が少なく、選びにくい。
【介護保険外サービスでできること】
一言でいえば、法に触れないことはなんでもできます。事業所が提供しているかどうかなだけで、できないものはありません。
では、介護保険内のサービスと比較して、具体的に挙げますが、まず介護保険内のサービスでは以下の事ができません。
〇「直接本人の援助」に該当しない行為
・主として家族の利便に供する行為、又は家族が行うことが適当であると判断される行為
・利用者以外の洗濯、買い物など
・利用者の使用する居室等以外の掃除
〇「日常生活の援助」に該当しない行為
〈日常生活を営むのに支障がないと判断されるもの〉
・花壇の整備や水やり、草むしりなど
・ペットの世話
〈日常的に行われる家事の範囲を超えると判断されるもの〉
・家具の移動、模様替え
・大掃除、窓ふき、床のワックスがけ
・特別な手間をかけた調理(正月料理など)
≪介護保険外サービスならできる具体例≫
●夫婦2人分の洗濯物の洗濯 ⇒ 利用者以外の洗濯なども可能です。
●嗜好品の買い物 ⇒ 介護保険内では日常品以外のものは買えませんが、介護保険外なら可能です。
●不在時の掃除 ⇒ 介護保険内では不在時の活動はできませんが、介護保険外なら可能です。
●外食の付き添い ⇒ 嗜好のための外出介助も可能です。
●囲碁、麻雀などの相手 ⇒ 趣味の相手も可能です。
●旅行中の介助 ⇒ 長時間のご利用も可能です。
●夜間の介助 ⇒ 夜間帯も対応している。
●土日祝日の処置 ⇒ 土日祝日も対応している。
介護保険内のサービスは意外とできることは少なく、介護保険外のサービスはなんでもでき、相談によってそれぞれのニーズに合わせてサービスを決定していくことになりますから、オーダーメイドのプランとなります。
【介護保険外サービスのこれから】
公的な介護保険によるサービスは制度改正以降、生活援助サービスなどの保険利用の規制が厳しくなり、利用が減少しました。そのため、サービスや安心を確保・維持する為に足りないと感じているサービスを補完するため、介護保険サービスと自費サービスを組み合わせて利用する方が増えてきています。
そして、「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい、医療、介護、生活支援・介護予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築に向けた動きが市町村を中心に加速している。」と地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスガイドブックの参考事例集でも述べられています。
しかし、介護保険外サービスを提供する事業所はまだ数が少なく、提供しようとする事業者にとってもスタンダードができていないため、進んで手を出せていないのが現状です。また、介護保険外サービスという認知度がまだまだ低く、高齢者はもちろん、自治体や地域包括支援センター、ケアマネージャー、看護・介護事業所といった高齢者との接点となる主体にまで情報が行き届いていないことも現状のひとつとなっています。
生業として訪問介護・看護事業をしていて、実際に利益を出せている事業所はそう多くはありません。従業員の最低人数等も国から決められおり、ご利用者様を確保できていない事業は人件費で赤字となります。そのような事業所が本来の業務+多種多様なサービスを提供できる保険外サービスを行うことは難しいと思われます。
もちろん、一つの訪問介護・看護事業所で保険適応サービスと保険適応外サービス両方を請け負っている事業所もあります。しかし、そういった保険適応サービスと保険適応外サービス両方を行っている事業所では、保険適応サービスの延長程度のサービスしか行えないという部分もあります。
今後、従来の世代と比べて消費文化を謳歌した団塊の世代が高齢化することにより、自分のニーズに合致した付加価値の高いサービスに対価を払う消費者が、今後増えていくと予想され、多種多様なサービスを展開していかなければならないと思われます。そういった意味でも、介護保険外サービスを発展させ、高齢者の住みなれた地域で、生き生きと暮らしていけるように支援できるシステムを構築していく必要があると考えています。